DSC_2830

気づいたら水戸が好きで好きでたまらなくなっていたんですよ

「10年間ぐらい東京で働いていたんですけど、いざ水戸に戻ってきたら、人がいないんですよ。僕には、水戸を離れる前の、わんさか人がいた記憶しかなったので、そんなふるさとを見て『なんだこれは!』って思いました」

2015年2月に水戸京成百貨店の裏手にオープンした、コミュニティスペース「VILLAGE310」のオーナー・秋山道さんが、当時のことを思い出す。

DSC_2916

街のなんでも屋

「このまま人がいなくなり続けたら街が消えちゃうんじゃないかと、危機感を強く抱きました。まちなかに商売をやっている仲間がたくさんいたので、水戸に戻ってきてすぐ彼らのところに行ったんですよ。『俺たちの街はどうなっちまったんだ!?』って。これが、僕がまちづくりに関わるようになったすべての始まりです」

「東京にいた頃は、アンティーク家具のバイヤーをやっていたんですが、家具カタログやDMなど、広報物を作っていたこともあって、独学ながらデザイン関係は結構学びました。その流れで水戸に戻ってきて、デザイン事務所・パークを興しました。まあ、デザイン事務所とは言ってますけど、実情はなんでも屋です(笑)。広報物やウェブサイトはもちろん、イベントはやるし、店の内装もやるし。怖そうな顔してるけど、色々頼まれごとが多いんです」

DSC_2820

店主が先生

秋山さんが続けてきた活動のひとつに、今年で5年目となる「水戸まちなかゼミ&まちカル」がある。
「まなぶ・たべる・つくる・ぶんか・きれい・けんこう」の6ジャンルで構成される約70もの講座が、水戸のまちなかで展開される。

「今ではすっかり定着した水戸バー・バル・バールは、震災後の水戸の飲食店を盛り上げるために始まりました。これを物販やサービスのお店にも波及させたのが、『水戸まちなかゼミ&まちカル』です。実は水戸には、物販やサービスの個店が多いんです。彼らはその道に長けているので、いわゆる専門家ですよね。専門家が持っている知識を講座という形で披露することで、興味を持ったお客様がその店のファンになり、リピーターになる。街のお店とお客様をつなげるきっかけになれば嬉しいですね」

「企画を立ち上げた5年前は、泉町エリアで12講座の開催にとどまっていましたが、水戸商工会議所さんが企画の趣旨に賛同してくださり、今では前・後期それぞれ約70、年間140講座にまで増えました。講座のエリアも広がってきたので、今後はもっと街全体に浸透させていきたいです。街を盛り上げるために多くの人が立ち上がり、色々なイベントが開催されてきました。この企画も頑張って継続させていくことが大切だと思っています

DSC_0811VILLAGE310で開催された水戸まちなかゼミ&まちカルの様子

一息つけるたまり場づくり

「この泉町エリアには、泉町会館という昭和30年に建てられた建築物があり、そこでもイベントを継続的に仕掛けてきました。ところが、その泉町会館で茨城の新鮮な野菜や特産品を販売する「Farmer’s Market@MITO(ファーマーズマーケット)」を開催すると、1時間も2時間も滞在するお客様が多いんです。野菜を買いに来ても、5分で終わるはずなのに、一人で来たお客様がいつの間にか5人ぐらいのグループになって『お昼でも食べて帰ろうか』なんて話している。こうした様子を見ていて、ゆっくりできるもう少し大きなたまり場が、まちなかに必要なんじゃないかって思ったんです」

DSC_1529-1Farmer’s Market@MITO

「そこで目を付けたのが、京成百貨店の南西の一角にあった、築50年のビル。長い間、水戸市医師会館として使われていましたが、当時は移転されて使われておらず、まちなかの拠点にするには最適な場所でした。所有者に譲っていただこうとしたんですけど、お金がなかったので、自身で改装運営プランをいろんな方に企画プレゼンして、協賛者を募りました。応援してくださった皆さんのおかげで、晴れてこの場所を譲っていただくことになったんです。その後は若いクリエイターたちに部屋を安く貸したり、演劇やライブ会場としても活用してきました」
ところが、そんな矢先に東日本大震災が発生し、建物は取り壊さなければならなくなりました。

しかし、秋山さんの心は折れなかった。2015年2月、その同じ場所にVILLAGE310が誕生した。
現在は1階がコミュニティスペースとカフェレストラン、2階がオフィスになっており、新たなたまり場として生まれ変わったのだ。

DSC_01911階にあるカフェ・ANTENNA

本が伝える心の時代

VILLAGE310の空間は、たくさんの本に囲まれている。そこに込められた秋山さんの思いとは?

「この水戸にどんな施設が必要なのか。クリエイティブであっても敷居を高くはしたくない。そんな思いから、街の皆さんにたくさん意見を聞きました。そしたら欲しいのはやはり『たまり場』だってなって。ちょっと本を読んでくつろげる、街の図書室のような、喫茶室のような空間を作ることにしました」

DSC_2957

「ここにある本はすべて、寄贈していただいたものです。ただ、『いらない本をください』と言って募集しても意味がないので、『あなたが他の人にも読んでいただきたい本をぜひ寄贈してください』と呼びかけました。すると、5,000冊も集まったんですよ。しかも、まだ増え続けていて、最終的には1万冊ぐらいになるんじゃないかな。お一人で700冊も寄贈してくださった方や、『私のコレクション、ここに置いとくわ』と、貴重な本を持って来てくださった方…ジャンルも様々で、漫画や写真集、音楽雑誌から百科事典まで、本当に何でもあります」

DSC_2956

「本を介在させることによって、今まで無関係だった人たちが、どんどんつながっていくんですよ。いつの間にか、ここで出会った人たち同士で、ワークショップを企画するようになったりね。もう経済の時代ではなく心の時代なんだと、僕は思うんです」

DSC_2988

名称未設定VILLAGE310で今年2月に開催された水戸マニアの会

「地方都市には大型店舗が増えました。商店街=ショッピングモールだと認識している若い子も多くいる時代です。では、ショッピングモールと商店街の違いって何でしょうか?それは、人のつながりがあるかどうかだと思います。希薄になってしまったかもしれないけど、商店街には確かに生活やコミュニティがあるんですよね。水戸にいる皆さんにそれを知ってほしいし、もっと伝えていきたいです」

パークが編集している街の広報誌「IZM」は、そうした「人のつながり」にフォーカスした情報を毎月発信しており、発行は既に112号を数える。
パークでは、他にも「シダージ」や「救民妙食」など街の発行物を数多く手掛けてきており、秋山さんと街の人とのつながりの強さがうかがえる。

無題広報誌IZM

まちづくり7割、仕事3割

「うちの会社では、デザイン系の学校を卒業した学生も受け入れているんですが、2年間ぐらい学ぶと東京に出て行くんですよね。でもそれは決して悪いことではなくて、むしろ東京に出て揉まれてきた方がいいと思います。生まれてからずっと水戸一筋というのも素晴らしいけど、外の空気を入れると、また違った発想が生まれてくるし、改めて水戸の魅力を再認識できます。僕自身、東京で色々なことをやってきたという経験値が、今になって生きているわけだし」

「でもいずれは、水戸に帰ってきてほしい。そのためには、彼らが水戸を巣立つまでに、将来水戸に帰ってくる理由やきっかけを、私たち大人が示してあげないとね。僕は正直、『絶対に水戸になんか帰らない』と思っていたんですけど、いざ元気がなくなった水戸を目の前にすると、『これはやばいぞ、何とかしないと』という気持ちになっていました。そして気づいたら、水戸が好きで好きでたまらなくなっていたんですよ」

DSC_2971

「あとは、言った以上はやるしかないというか、ある種反骨のエネルギーみたいなものかな。まちづくりは、情熱を持っていないと当然できないし、何よりとことんバカであることが大切だと思います。僕の中ではいつもまちづくり7割、仕事3割ですから」

言葉ひとつひとつから、溢れんばかりの水戸愛を感じることができた。秋山さんの優しい笑顔とまちづくりへの情熱で、どんどん水戸を愛する人々が増えることだろう。

DSC_3153VILLAGE310
■営業時間:11:00~19:00
■定休日:水曜日

水戸まちなかゼミ&まちカル
■開催期間:9/1(木)~10/2(日)
■開催場所:水戸のまちなか
■申込み方法
水戸商工会議所ホームページまたは各参加店・事業所に電話でお申し込みください。

緯度経度で指定
大きな地図で見る

住所:水戸市天王町2−32

TEL:029-291-3100

自分たちでつかむ1番を夢見て 原作は私ですが、この物語は水戸の皆さんのものです

過去の記事

みとの魅力に出会えるナビアプリ 水戸のこと

好評配信中!