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変化を続けて、長く愛される

オムライスにハンバーグ、ドリア、ナポリタン…。その名を聞くと今にもお腹が鳴りそうな、みんなが大好きな洋食の王道。

そんな「鉄板」メニューを、昔から変わらぬ味で提供し続けるのが、水戸市南町2丁目にある「洋食屋 花きゃべつ」。世代を超えてファンが多い、まさに水戸の老舗である。あの直木賞作家・恩田陸さんも高校時代に足繁く通っていたそう。

「店を受け継いでから、長年愛され続けることの難しさを実感しました」
そう語るのは、花きゃべつの若き店主・嶋田淳(しまだじゅん)さんだ。

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花きゃべつの創業は、今から約40年前の1981年にまでさかのぼる。
「私の叔母が開業し父も当初から店長兼ボーイとして働き始めました。店の近くに県庁や市役所、新聞社などがあり、ランチタイムはサラリーマンやOLでいつも満席でした。とは言っても、当初はコーヒーショップとしてオープンしたので、今みたいに『推し』の食事メニューはなかったんですよ。創業から7、8年経ったあるとき、東京のある飲食店で提供されていたオムライスに叔母が影響を受け、花きゃべつでも提供するようになりました」

花きゃべつの食事メニューは当初から評判を呼び、水戸の人気洋食レストランとして、その地位を築いていくこととなった。
「私も叔母と父の味で育ちましたから、そういう意味では、花きゃべつのファンの一人ですね」
嶋田さんはやさしい笑顔でそう語る。

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今でも店を手伝う、叔母の澤畠道子(さわはたみちこ)さんにも、話を聞くことができた。
「私はもともと食べることが好きで、それがレストランを始めたきっかけかな。お客様が何を求めているのかを考え、色々なことに挑戦したのよ。オムライスはもちろん、当時は珍しかったお弁当のテイクアウトメニューを始めたり、他店ではやっていない味付けを考えたり…。今でもたくさんの方に来ていただけるのは、どんな料理も手作りで丁寧に作り続けてきたからじゃないかな」

「昔から、会社や銀行の偉い方がよく食べにいらしてたけど、どこの誰だかを詮索しないで、他のお客様と同じように接していました。だって、お昼ぐらいはゆっくり食べてほしいじゃないの」

「あとね、長く店をやっていると、三世代にわたって付き合うお客様もいるのよ。『懐かしくなって来た』とか『よく食べに来ていたんです』とか言われると、やっぱり嬉しくなっちゃうよね。商売冥利に尽きるというか。やっぱり、最後は『人』だよ。そうやって花きゃべつは支えられてきた」
道子さんの言葉一つ一つが、まさに花きゃべつの歴史を物語っていた。

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再出発への決意

今でも記憶に新しい、2011年。あの東日本大震災が、水戸を襲った。
花きゃべつが店を構えるビルも被災し、大きなダメージを受けた。
それでも何とか営業を再開し、日常を取り戻しつつあったが、2016年3月、ビルが取り壊されることになり、閉店を余儀なくされた。
「お客様から惜しまれつつ閉めることになってしまったので、叔母と父はかなり悔しかったと思います」

DSC_0746先代の嶋田清(きよし)さんと

当時、嶋田さんは都内の大学を卒業後、大手ハンバーガーチェーンを手がける会社に就職し、地元を離れていた。
「幼い頃から叔母と父の背中を見て、いつかは自分の店を持ちたいという夢を持っていました。また、震災後は特に、何か地域に還元できることをしたかったので、水戸に戻るのはこのタイミングしかないなと思いました」

花きゃべつの舵取りを担うことを決意した嶋田さんは、再開に向けて準備に明け暮れた。
そして、2016年9月、旧店舗から徒歩5分ほど離れた場所に「洋食屋 花きゃべつ」として再オープンした。
「前の店舗からのお客様が、また足を運んでくださるのが一番嬉しいです。叔母や父が築いた40年間の重みを実感しますね」

先代である父・清さんは、
「一時は閉店しようと思ったんだけど、またこんなふうにやれて嬉しいよね。息子は、お客様への応対がとても丁寧で、俺にはできないもんを持ってるよ」
道子さんも、
「甥は勉強家で、熱意があるのよ。それがお客様にも伝わるんじゃないかな」
経営者としての嶋田さんの手腕は、すでに二人も認めるほどだ。

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守るべきものと変えるべきもの

嶋田さんは、道子さんや清さんのもとで料理の修行をし、しっかりと先代の味を守り続けている。
「リニューアルオープンから約1年半経ち、一通りは『花きゃべつの味』が作れるようになりました。とは言っても、やはり微妙な味の違いは出てしまうので、お客様からのご意見やご提案は積極的に受け入れて、料理に反映するようにしています」

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嶋田さんの一押しは、納豆ハヤシオムライス。花きゃべつに行ったらぜひ食べておきたい、納豆を使った洋食メニューだ。
「約15年前に、ご当地グルメとしてねばり丼が登場したのをきっかけに、うちでは『洋風ねばり丼』を提供しようと考えました。これが、洋食と納豆のコラボの始まりです。おかげさまでご注文いただく方が多いです」

納豆ハヤシオムライス

さらに、嶋田さんは続ける。
「『花きゃべつの味だね』って言っていただくように努力するのは当然ですが、それだけでなく、東京の店を巡ってみたり、自分なりに色々と作ってみたりして『新しい風』を取り入れるようにしています」

洋風ねばり丼

好きを仕事に

「震災以降、18時に店を閉めていたんですが、リニューアル後は夜も営業しています。お酒も出すようになりました。クラフトビールをメインに据えて『ちょい飲み』を楽しんでもらえるよう、ローストビーフなど、ビールに合った料理の提供も行っています」

ビール好きが高じ、嶋田さんは「ビアコーディネーター」という資格を取得するほど。
「簡単に言うと、ビールと食事のうまい組み合わせを提案できるという資格です。ワインのマリアージュやペアリングのようなものですね。例えば、重めのソースを使った料理には、ビールの味が負けないように、コクのあるビールを提案したり」

「ビールはさまざまなアレンジができるんですよ。極端な話、副原料に水戸産の梅を入れることもできるので、可能性が広がるというか、とても面白いお酒だと思います」

嶋田さんのビールへの思いは尽きないようで、
「東京では、店でオリジナルのビールを醸造する、ブリューパブが増えています。私は東京にいた頃から醸造の勉強もしているので、いつか自分の店でオリジナルのビールを提供するのが夢なんです」

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時代とともに歩む

人気店を引き継ぐにあたって、不安やプレッシャーなどはなかったのだろうか。
「会社時代、料理は学べませんでしたが、経営やマーケティングについてはかなり勉強しました。ハンバーガーチェーンの新店舗の立ち上げやブランドの開発にも携わったので、『どうすれば、お客様に長く愛される店であり続けられるか』ということは常に意識しています」

「SNSやWebサイトなどでの情報発信にも力を入れるようになりました。ただ、むしろ今はお客様から情報を拡散してくださることの方が多いですね。うちは、リニューアル前から高校生のお客様にもよく来ていただいたのですが、昔と違うのは、『これが食べたいです』ってスマホの画面を見せてくるんです。話を聞くと、SNSで他の高校生が投稿した、うちの料理の写真でした。時代だな、と思いましたね(笑)。と同時に、これからはその時代に合わせて戦略を打っていくことが必要だと感じました」

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変化し続けるということ

「変化を続けてきたことで、今の花きゃべつがあるのかなと思っています。オムライス、お弁当のテイクアウト、納豆メニュー、そして店舗のリニューアル。時代に合わせて少しずつ変化してきたからこそ、昔ながらの洋食屋が今までやってこれました」

老舗としての気概と、若き店主の新たな挑戦。新しい水戸らしさは、こうして形づくられていくのだ。

P1233418洋食屋 花きゃべつ
営業時間:11:00~21:00
定休日:日曜日・祝日

緯度経度で指定
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住所:水戸市南町2-6-31

TEL:029-306-6850

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