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「好き」を追い続けてどこまでも

講談を生で見聞きしたことのある人は、数少ないかもしれない。
講談とは、演者が張り扇で釈台をリズム良く叩く話芸である。そのルーツは古く、奈良、平安時代に遡ると言われているが、一般的に知られている講談は、江戸時代に『太平記』などの軍記物を、民衆に面白おかしく読んで聞かせたということに由来する。
この伝統芸能を後世に伝えるべく、日々活動を続ける女性がいる。

水戸出身の講談師・神田真紅(かんだしんく)さんだ。

「講談師には『前座』『二ツ目』『真打』と階級があって、今私は二ツ目です。二ツ目として十数年やると、真打になります。二ツ目は雑用をやることもあれば、公演によってはトリをとることもあります。中間管理職的なポジションですね」

「現在、全国に落語家は約800名いて、楽屋にも入れず入門待ちになるほど。一方で、講談師は80名弱しかおらず、5年に一度若手が入って来るかどうか…。そんなこともあり、茨城出身の講談師としては、私は幕末以来の人間だそうですよ」
そう語ってくれた真紅さんを虜にした、講談の魅力とは何なのだろうか。

歴史好きが高じ講談師へ

「古いものや歴史が大好きで、特に新撰組は小学生の頃からハマっていました。私の部屋にある壁一面の本棚が、新撰組関連の書籍で埋まってしまうぐらい。歴史好きが高じて、大学ではずっと日本史の研究をしていました。卒業後は、学芸員か小説家になりたかったんですが、学芸員の方は、当時就職難だったんですよ。あと10年は待たないとどこも空員が出ないって言われましたね。じゃあ、小説が書けるところに行こうと思って、ある出版社の編集部に就職しました」
小説と講談、一見何のつながりもないように思えるが、真紅さんは続ける。

「出版社では、演芸誌を手がける部署に配属されました。そこで落語や講談の世界を取材し続けるうちに、師匠・神田紅の講談に出会ったんです。講談は自分で台本を書けるし、歴史の話もできるし…。まさに小説家と学芸員だなと(笑)そうして、神田一門に入門することを決めました」

余談だが、落語家は「師匠」と呼ばれ、講談師は「先生」と呼ばれる。これはもともと、軍記や物語を“講義解釈”していたためである。なお、自分の師に限っては「師匠」と呼ぶそうだ。
それはさておき、編集者から講談師へと、劇的な転身を遂げることになった真紅さんだが、不安はなかったのだろうか。

IMG_5837-1_filtered写真左が師匠の神田紅(くれない)さん(撮影:森松夫)

「この世界は、あまりにもしきたりが多くて、普通なら戸惑うと思いますが、私は3年間の準備期間がありましたから。仕事でしょっちゅう寄席に出入りしていましたし、講談師の世界とはどういうものか、なんとなく認識していたので、カルチャーショックはあまりなかったですね」

「大学では狂言研究会に入っていたので、声を出す技術はそこで習得しました。あと、すり足ができないと狂言を教えてもらえないんですが、私は中学、高校と6年間、弓道をやっていたので、すり足もできていたんです」

IMG_5839-1_filtered狂言の舞台に立つ真紅さん

「こう振り返ると、私の人生って、何かの世界に飛び込む前に必ず準備期間があるんです。キャリアがうまくつながっていくというか。無駄なことをやっているようで、実は無駄じゃなかったんですよね」

弓道弓道部時代の真紅さん

趣味と実益、それが神田真紅流

「茨城や水戸が舞台のお話って、ものすごくたくさんあるんですよ。例えば、テレビドラマ『水戸黄門』は、講談『水戸黄門漫遊記』の話をもとにしています。でも、世に知られている『水戸黄門漫遊記』は、その中のほんの一部でしかありません。それはもったいないですよね。だから私は、埋もれてしまった茨城や水戸の話を、水戸出身ならではの視点でもう一度掘り起こし、皆さんに伝えていきたいです」

自身の得意分野をこれでもかと言わんばかりに詰め込むのが、真紅さんの講談。
「私はゲームも好きで、ゲーム講談をやっています。『ゲームボーイは、電車でたまたまサラリーマンが電卓で遊んでいるのを見て、これだと思った』『このゲームがそもそもどのように作られたのか、知らないでしょ?』と始めると、『お~!』と客席が沸くんです。ゲームの世界には、裏話や裏設定が結構あって、とても奥が深いんですよ。他にも、アニメや特撮の話なんかもやります。講談は何でも話にできるのが魅力です。映画好きなら『今日はスパイダーマン講談です』、相撲好きなら『稀勢の里物語です』とか。落語の笑いと違って、講談は講釈をしなければならないので、自分の得意分野を喋った方がやりやすいんです。あとは私自身、お客様と喜びや懐かしさを分かち合いたいというのもありますね」

スパーダ―マン映画講談の様子

さらに、無類の猫好きでもある真紅さんは、講談をとおして保護猫活動に参加している。
ネコリパブリック東京という、保護猫を集めて里親を探すという猫カフェがあります。そこで毎月、猫好きの落語家と講談師が集まって、寄席をやっています。おかげで何人か、お客様の中から里親になってくださる方がいらっしゃいました。でも、里親が見つかると嬉しい半面、その猫に会えなくなっちゃうのは寂しいですけど」

nekoネコリパブリック東京での講談の様子

水戸×講談

2017年9月9日、水戸芸術館で初の『アートタワー寄席』が開催される。
「水戸で寄席が観られる機会は、めったにありません。そもそも、講談に触れたことのない方が圧倒的に多いと思います。今回の寄席をきっかけに、茨城や水戸に演芸文化がもっと浸透してほしいですね」

「当日、どんな講釈をするかは、会場の雰囲気やお客様の反応を見ながら探っていこうと思います。地元ではお馴染みの話や、地元の人も知らない水戸の歴史の話…。講談は、どの話にも必ず『へぇ!』と感じてもらえるポイントがありますので、初めて観る方もそうでない方も、自分なりの面白さを見つけていただければと思います」

「講談は、手間がかからない演芸です。大きな舞台装置なども必要ありません。水戸で定期的に落語や講談ができるのが理想ですが、私は居酒屋の隅っこやバーのカウンターで講釈したこともあるぐらいなので、お呼びであればどこにでも駆けつけます。まずは、講談という演芸があるということを、ついでに、神田真紅という講談師がいるということも知っていただけたら嬉しいです」

「親からもらった名前を捨てるのは良くない」という神田紅師匠の考えから、本名から「真」という文字を残し、「真紅」とした。
「好き」をとことん追い続ける真紅さんは、その名の通り真っ紅な情熱に満ちあふれていた。

神田真紅さんTwitter

未来サポートプロジェクトvol.10『アートタワー寄席』
■日時:9月9日(土)15:00開演
■会場:水戸芸術館ACM劇場
■チケット取扱い
水戸芸術館エントランスホール内チケットカウンター
水戸芸術館チケット予約センター(9:30~18:00 月曜休館):電話 029-225-3555
水戸芸術館ウェブ予約

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住所:水戸市五軒町1-6-8

TEL:029-225-3555

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