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展望台をつくっているおじさんがいる。

“DIY”という言葉を耳にする機会が増えた。
“DIY”とは“Do It Yourself”の略語である。専門業者ではないが、自分自身で何かを作ったり、修繕したりすることを指す。2015年にトレンドとなったDIYは、男性だけでなく、今や若い女性にも広がりを見せている。だが、水戸には45年以上も前からDIYを続けている人がいる。

「小さい頃から工作が好きで、ラジオを自分で組み立てたりしていました。あるとき、ずっと住んでいた家が狭くなったので、父が部屋の増築を始めたんですが、それがどうもかっこ悪くてね、私の方がもっと良い家を作れるんじゃないかと思ったんですよ」
と語るのは、川又一郎さん。

当時も、いわゆる“日曜大工”がブームになっていたとのことだが、住む家まで自分で作った人など果たしていただろうか。
土台作りから始まり、家の全てを自身で手掛けた若者がいるという噂は瞬く間に知れ渡り、新聞や雑誌の記者から取材が殺到したという。

DSC_0431-1昭和46年の常陽新聞一面

素人でも、やってやれないことはないんですよ

川又さんの挑戦は、まさにゼロからのスタートだった。
「両親も、それまで住んでいた家の土間や台所の平屋を自分たちで作ったので、私が家を作ることに対して理解がありました。ただ、私は建築のことなんて全然わからなかったので、暇を見つけては専門誌を読んだり、設計図を何度も書き直したり…途中でお金が足りなくなって、車を売ったりもしました」

「当時は、土曜日が半日勤務だったから、午後に材料を買ってきて、日曜日に丸々1日作業。週末は家作りに時間を費やした記憶しかないなぁ。ドアを1枚作るのがやっとの日もあったりで、結局8年もかかっちゃいました。まあ、なんとか結婚するまでに完成して良かったですよ」

独り占めじゃあもったいない

川又さんのご自宅からは、栃木県から太平洋へと注ぐ那珂川、その周辺に広がる田畑などの風景を見渡すことができる。

「ずっとこの景色を見て育ちました。遠くは奥久慈の男体山から阿武隈山脈の高鈴山や神峰山まで、とにかく見渡せる範囲がすごい。これだけの景色を持っている台地はめったにないと思うよ」

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眼下に広がる景色は、様々な顔を見せてくれる。
小学校の運動会で万国旗が掲げられていた。蒸気機関車が煙を吐いているのが見えた。高さ213mのエレベーター研究塔G1TOWERが、徐々に完成していくのが楽しみだった。作物によって、川向こうの畑の色が変わるのがきれいだった。

自身を育ててくれたこの景色を、独り占めするのはもったいない。
そんな気持ちから、13年前、川又さんは私設展望台を作ることを決意した。

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誰でも自由に足を踏み入れることができる展望台。
川又さん宅の周りにある、これまた手作りの案内看板を頼りに進み、木の階段を数段上ると、3人ぐらいが立てる眺望スペースがある。
さらに数段上にある1人用展望台に立つと、心地よい風が吹き込み、まるで時間が止まったかのような感覚をおぼえる。

展望台の奥に進むと、2坪ほどの建物が現れるが、こちらは?
「昔、那珂川沿いで年忘れの花火大会があったんです。展望台からだと寒いんで、離れを作ってそこから観ようかなと思ってね。でも、せっかく作ったのに、花火大会はもうやらなくなっちゃったんだよね」

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岡倉天心でおなじみの六角堂をもじって名付けたその離れの名は、「五角堂」。台風が来ても風を逃がせるよう、四角形ではなく五角形に設計したところが、川又さんらしいこだわりだ。
五角堂から花火を観る、そんな贅沢はしばらく味わえていないが、男のロマン溢れる隠れ家でのひとときは格別だと語る。

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地域への恩返し

川又さんのことを表すには、地域を支える顔としての一面を忘れてはならない。
「私は現役時代、全くと言っていいほど地域のことに無関心でした。でも、現役を退いて町内会長になったのがきっかけで、地域のために恩返しをしていきたいと思うようになったんです。今では私が住む新荘地区の、地区会長になりました。最近は、地域のことに関心がない方々が多いので、もっと皆さんに地域に触れてもらうきっかけを作っていきたいです」

川又さんが住む地域には、約6,000株のあじさいが咲き誇る保和苑や、歴史的価値のある史跡や寺社仏閣が多く存在する。
川又さんは、保和苑や周辺史跡で開催される水戸のあじさいまつりの実行委員長や、保和苑周辺史跡観光連絡協議会の会長も務めている。

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「あじさいまつりのときに、参道をぞろぞろと歩く団体のお客様を見ると、昔のにぎわいを思い出しますね。ちなみに、保和苑に咲いているあじさいは、私を含め地元の人たちが植えています。うちの畑にあじさいを挿し木して育て、それを保和苑に持って行くんです。」
大切に育てられきたあじさいは、今年も鮮やかな色に身を包み、訪れる人を楽しませる。

関連記事:「水戸一中OBがつくりました。」(水戸の人々)

① DSC_1704-1保和苑内の看板なども、川又さんの手によるもの

保和苑も展望台も、大切な、守りたい景色。
何でも自分で作り上げてきた川又さんだが、人々がこれらの宝物に思いを馳せ、次世代へと継承されることを願ってやまない。

DSC_1653-1ReMITO17.展望台をつくっているおじさんがいる。(ガイドブックデータ)

第42回水戸のあじさいまつり
■期間:7/3(日)まで
■会場:保和苑及び周辺史跡
■TEL:029-232-9189(水戸市観光課)

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住所:水戸市松本町9-1

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