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戦後焼け野原の水戸の町に声が聞こえてから約70年。

「メガネは技術がいのち メガネのクロサワへどうぞ」(音声データが再生されます)

水戸に住む人ならば、きっと聞いたことがあるはず。
水戸駅北口を背に国道50号を歩いていると、街灯に取りつけられたスピーカーから、明るい女性の声が耳に入ってくる。

「水戸ではこれが当たり前の光景になっているでしょ?でも、この街頭放送って今は北海道(札幌、小樽、函館など)と水戸にしかないらしいのよ」
声の主である水戸公衆放送の小松崎節子さんは、少し寂しげに話す。

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戦後間もない頃、街頭放送のスピーカーが登場。多くの人々の耳に届けられる宣伝手法として、全国的な広がりを見せることになった。
水戸も例外ではなく、まだ焼け野原だった昭和23年、水戸公衆放送が創設された。

「前の社長がこの会社を立ち上げたときは、まだGHQが駐留していて、彼らに尾行されたこともあるらしいの。報道の自由で何を放送されるかわからないから、警戒していたみたいね」

_G5A5393昭和23年、創設当時の水戸公衆放送(後ろは水戸市役所)

創業者への想い

「もともと私は、英語を活かした仕事がしたくて上京したんだけど、結局30歳で水戸に戻ってきて、それからずっとこの会社にお世話になってます。当時は、今の5倍ぐらい広い事務所で、女の子も8人ぐらいいたかな。広告媒体がほとんどなかった時代なので、放送の依頼が引っ切りなしにありました。放送が途切れずにまちに響いていたから、うるさいって苦情が来たこともあったのよ」

「前の社長は、とても高い技術を持った方でした。百里基地に無線通信の設備を納品したり、飛行船で有名なツェッペリンに、一緒にドイツに来てくれないかって誘われたりもしたそうよ!今、メインストリートに50か所ぐらい設置しているスピーカーも、材料を取り寄せて、前の社長が全部自分で作ったの」

社員旅行29年前の社員旅行の写真(中央が前社長、小松崎さんは左から2番目)

「よくケンカもしたけど、社長は私のことをとても可愛がってくれました。だから、亡くなられたときは本当に寂しかった。でも、会社を続けていかなければならないので、私が中心になって、従業員みんなで引継いだんです」

「それから10年ぐらい経ち、みんな結婚して会社を辞めたので、とうとう私一人になっちゃって。年齢も年齢なのですごく悩んだんだけど、『前の社長に恥をかかせるわけにはいかない』と思って、社長として頑張ることに決めました」

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万が一のためにできること

「この会社を引継いでから12年経ちました。色々あった中でも、4年前の東日本大震災は、とても記憶に残っています。あの瞬間、私は事務所にいなかったんだけど、心配で後から様子を見に来たら、機材が全部落ちてたの。この狭い事務所にいたら、多分外に出られなくなっていたんじゃないかな」

「ケーブルも断線していたので、これを機に会社をたたもうと思ったわ。でも、次の日に機材の電源スイッチを押したら、ちゃんと入ったのよ!それからは、とにかく色んなところに電話をかけて情報を手に入れ、原稿を書き、ひたすらここから生放送を続けました。『道路が通行止めです』『橋が壊れています』って。必死だったのね、特に頼まれたわけではないんだけど、それを3月いっぱい続けたんです」

「普段はイベントの告知やお店の宣伝が多いけど、万が一災害があった場合に、何か役に立てる可能性がある。あの経験から、そんなことを学びました」

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次世代へ声をつなぐために

「私の人生は本当にドラマチック。結婚式の司会を1,000回以上やりました。毎年1回、東京で舞台にも出ています。高速バスで通って、某アニメの声優さんに10年以上レッスンを受けたりもしたのよ。この会社については、社長だけで12年、従業員時代から数えると40年以上携わっているのよね。だから、そろそろ次の方に引き継ぎたいかな。最近私は、水戸で頑張っているアーティストの才能を地元の人に知ってもらうために、彼らの曲を定期的に流したりしているんです。もしそんなふうに、まちのためにこの設備を使ってもらえる方、面白いアイディアを持っている方がいらっしゃれば、ぜひお譲りしたいの」

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「街頭放送が水戸のまちから消えたら、静かになる一方で、とても寂しいわね。私は、この会社を未来ある若者に託したいです。営業は全然ダメだけど、この声で全面的にバックアップできますから。それに、私の老後の楽しみにもなるしね。あ、もう十分老後かしら(笑)」

まちの雰囲気に溶け込む小松崎さんの声。
水戸のまちの風物詩として、いつまでも変わらず響き渡る。

Re MITO.58 戦後焼け野原の水戸の町に声が聞こえてから約70年。(ガイドブックデータ)

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住所:水戸市宮町2-3-2富士ビル9F

TEL:029-221-3711

黒の黒を知る。 矢沢な、タクシー。

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